2024年7月13日から14日にかけて、地域で活躍するリーダー人材を育成する「鞆の浦(とものうら)・地域医療プログラム2024」の第1回定例会が開催されました。今回の講師は、鞆の浦・さくらホーム創設者の羽田冨美江さんと、ワークショップデザイナーの佐々木将人さんです。16名の参加者たちは、講義やまち歩き、お祭り行事への参加を通して「地域との関わり方」について学び、ワークショップを通してこれから半年間の目標を立てました。本記事では、第1回定例会の様子をお伝えします。
鞆の浦・地域医療プログラムとは
鞆の浦・地域医療プログラムは、地域課題を解決するためのアプローチの選択肢を広げ、自らが貢献したい地域でのアクションにつなげることを目的とした6ヵ月間の人材育成プログラムです。地域をより良くしたいと考えている方を支援するために、2023年春に立ち上がりました。自身が活動する地域での悩みや課題を解決することのできる、地域医療のリーダー人材を育成します。
イベント概要/タイムスケジュール
鞆の浦・地域医療プログラム2024 第1回定例会
主催:株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ
企画・運営:鞆のくらしの診療所、福山市地域おこし協力隊、鞆の浦・さくらホーム
日程 | 2024年7月13日(土) 〜 7月14日(日) |
開催場所 | お宿と集いの場「鞆の浦・燧冶」 |
内容 | 講義「地域との関わり方」 目標設定ワークショップ |
参加者 | <講師> ※敬称略 羽田 冨美江(鞆の浦・さくらホーム | 有限会社親和代表取締役) 佐々木 将人(ワークショップデザイナー) <受講生> 在原 房子(医師) 尾川 達也(理学療法士) 小川 美穂(社会福祉士) 貝川 葉子(作業療法士) 茅本 高志(介護福祉士/訪問介護経営) 櫻本 真理(会社経営) 中村 愛(保健師) 新美 沙奈(社会福祉士) 松森 典子(看護師) 溝内 辰夫(事業企画) 安田 彩夏(奥出雲町地域おこし協力隊/理学療法士) 山口 開渡(理学療法士) 山本 涼太郎(医師) 北山 万由子(医学部学生) 古謝 海愛(看護学部学生) 佐々木 一款(医学部学生) <スタッフ> 平岩千尋(鞆のくらしの診療所/福山市南病院/医師) 河村由実子(福山市地域おこし協力隊/理学療法士) 居城柚那(鞆の浦・さくらホーム) 佐々木将人(ワークショップデザイナー/理学療法士) |
タイムスケジュール
◆ 1日目(7月13日)
13:00 開会挨拶・自己紹介
13:15 講義「地域との関わり方」
14:15 質疑応答
14:35 休憩
14:50 まち歩き説明
15:00 さくらホーム視察、まち歩き
17:00 中締め
18:30 懇親会
20:30 お手火神事(鞆の火祭り)
◆ 2日目(7月14日)
09:30 目標設定ワークショップ
11:45 振り返り
12:00 解散
各コンテンツレポート
講義「地域との関わり方」
講師:羽田冨美江さん(鞆の浦・さくらホーム|有限会社親和 代表取締役)
1956年生まれ、兵庫県出身。理学療法士として病院や老人保健施設、リハビリテーション専門学校に勤務した後、2004年に鞆の浦・さくらホームを開設。20年にわたり、地域に根ざした介護・福祉事業の実践を続けている。2024年、日本地域福祉学会の地域福祉優秀実践賞を受賞。著書に『超高齢社会の介護はおもしろい!』(ブリコラージュ、2019年)など。
まずは、さくらホーム創設者・羽田冨美江さんによる「地域との関わり方」の講義がありました。
広島県福山市鞆町で介護・福祉施設を営む「鞆の浦・さくらホーム」は、2004年に開所しました。「年齢を重ねても、障がいがあっても、居場所となる『まちづくり』」をミッションに掲げ、グループホームと地域密着型デイサービスからスタートし、現在では居宅介護支援、看護小規模多機能型居宅介護、訪問看護、放課後等デイサービス、児童発達支援、就労継続支援B型、相談支援、古民家ゲストハウス、駄菓子屋の計11事業を展開しています。羽田さんは、リハビリテーションの専門知識を活かしながら、年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず人と人がつながり支え合う、地域共生のまちづくりを20年にわたり進めてきました。
病院で理学療法士として働いていた羽田さんが、地域でのケアやまちづくりに力を入れるようになったきっかけは、お義父様の介護経験でした。「支援が必要な人が地域で暮らし続けるためには、地域住民に受け入れてもらうことが必要でした。地域の人とともにケアの文化を築いていこうと、地域住民の声に耳を傾け、その声に応える形で、必要なものを作り続けてきた20年でした」。
講義では、20年にわたる鞆の浦とさくらホームの歩みや、ご自身のターニングポイントなど、心に響くメッセージがたくさん伝えられました。特に、ケアを町にひらく、スタッフや利用者さんの「地域化」について強調され、利用者さんが地域住民として町で暮らし続ける上で大切なこととして紹介されました。
最後は、「目に見えない資本(知識資本、信頼資本、関係資本、評判資本、共感資本)」を身につけた人材こそが重要となるという言葉で締めくくられました。会場からは、講義内容を深掘りする質問や、羽田さんの原動力やこれまでの歩みに関する質問など、さまざまな角度から質問が寄せられました。
施設見学 / まち歩き
2つのグループに別れ、鞆の浦・さくらホームの施設見学とまち歩きを行いました。
まち歩きでは、鞆の浦の文化や歴史を感じられる通りを歩いたり、「鞆てらす」という地域住民と来訪者の交流の場・観光の周遊拠点となる施設に立ち寄ったりしました。また、鞆の伝統産業である保命酒(※)の醸造所も訪れ、試飲や酒粕のアイスキャンディなどを楽しみました。
※保命酒とは
保命酒は、福山市の鞆の浦の特産品として約350年前(江戸時代)から作られているお酒です。高麗人参やさんしょうなど、16種類の薬味を原酒につけこんで造られています。大阪の漢方医だった中村吉兵衛氏が生みの親だといわれています。
懇親会/お手火神事(お祭り)
懇親会は、講義会場兼宿泊場所である「燧冶(ひうちや)」で行われました。参加者の中でひときわ声の大きな山本さん(愛称「熱男」)の発声のもと、乾杯! 1日を振り返りながら、このプログラムに参加した想いや感想などを自由に語り合いました。会場は終始、温かい雰囲気に包まれ、会話が弾みました。
その後、鞆の浦にある沼名前神社を舞台に行われる、日本三大火祭りの一つ「お手火神事」を見に行きました。「オーラ チョイトー!」という掛け声が飛び交う中、200kg近いお手火(火の着いた松明)を上下左右に揺らす姿は、言葉にならないほどの迫力がありました。鞆の浦は、年に7回もお祭りが行われるほど祭り文化が盛んな地域です。その独特の祭り文化に触れ、参加者全員が大満足の時間を過ごしました。
目標設定ワークショプ
講師:佐々木将人(ワークショップデザイナー)
1990年大阪府枚方市生まれ。訪問看護ステーション・療養型病院を経て、訪問診療所で診療同行セラピストとして勤務。理学療法士として働きながら組織内の関係性構築を目的としたワークショップを担当する。また、日本最大級介護のコミュニティ「KAIGO LEADERS」でコミュニティマネージャーを務める。ワークショップや対話などの手段を用い、人と人との有機的な関わり・つながりの創出と場の活性化を目指す。
2日目は、ワークショップデザイナーの佐々木将人さんのファシリテーションのもと、「目標設定ワークショップ」が行われました。参加者は3人ずつ6つのグループに分かれ、それぞれの現在の状況を説明し、質問に答えながら、他のメンバーから「自分だったらこんな目標にするよ!」という大胆な目標を提示してもらいました。全員が心理的安全性を保った状態で自由に発言できる雰囲気の中、メンバーからの言葉にハッとさせられる場面も多く見られました。
まとめ
今回の定例会では、地域との関わり方や地域ぐるみのケアについて学びを深めるとともに、今後半年間の過ごし方について考えることができました。また、施設見学やまち歩き、参加者同士の交流を通じて、地域に向き合う際の新たな視点を得ることができました。
次回の第2回定例会までの1ヵ月間、16人の参加者たちはそれぞれに目標を設定し、次回の講義「ケアのデザイン」に向けて準備を進めます。
今後、参加者の皆さんは、本プログラムで学んだことを活かし、自身が貢献したい地域の課題に向き合い、具体的なアクションを形にしていきます。12月の最終成果発表会までにどのようなプランが磨き上げられるか楽しみですね。運営メンバーも全力でサポートしていきます!
福山市地域おこし協力隊では、今後も本プログラムの様子を当サイトやSNS等で発信していきますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
関連サイト/SNS
・福山市地域おこし協力隊Instagram
・鞆の浦・地域医療プログラムInstagram
【取材・文=河村由実子、撮影=山本尊也】
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