【開催報告】2023.9.2-3「鞆の浦・地域医療プログラム第3回定例会」

レポート

2023年9月2日(土)と3日(日)、地域医療のリーダー人材を育成する「鞆の浦・地域医療プログラム2023」の第3回定例会が開催されました。

満元貴治さん(株式会社HAPROT代表取締役)、簾藤麻木さん(一級建築士事務所nenlin/ケアのデザインストアねんりん代表)、川原奨二さん(株式会社ゆず代表取締役)の3名を講師に迎え、15名の受講者たちは、「医療者が提案する住まいづくり」や「ケアのデザイン」について学びを深めました。この記事では、第3回定例会の様子をお伝えします。

イベント概要

鞆の浦・地域医療プログラム2023 第3回定例会
主催:鞆のくらしの診療所、福山市地域おこし協力隊、福山観光旅行株式会社

日程2023年9月2日(土)13:00 〜 9月3日(日)13:00
開催場所鞆の浦・燧冶、ゆずっこホームみなり、看多機ホームみそのっこ、尾道のおばあちゃんとわたくしホテル
内容講義:「医療者が提案する住まいづくり」「ケアのデザイン」
見学:株式会社ゆずが運営する小多機、看多機と学生専用シェアハウスの複合施設、ゲストハウス
参加者<講師> ※敬称略、順不同
満元貴治さん(株式会社HAPROT代表取締役)
簾藤麻木さん(一級建築士事務所nenlin/ケアのデザインストアねんりん代表)
川原奨二さん(株式会社ゆず代表取締役)

<受講生>
藤田日菜子(理学療法士)
飯塚純子(障害福祉事業所管理者・相談員)
不破花奈実(CS・看護師)
多治比 麻莉奈(看護師)
土井脩平(理学療法士)
光田栄子(医師)
槌田梨奈(作業療法士)
西原康平(看護師)
森田珠衣(介護職/作業療法士)
竹中萌(医師)
田辺裕雅(医師)
前田徳也(医師)
篠田和(医学生)
橘髙みなみ(医学生)
中尾光希(医学生)

<スタッフ>
平岩千尋(鞆のくらしの診療所 / 藤井病院)
河村由実子(福山市地域おこし協力隊)
漆原治樹(福山観光旅行株式会社 代表取締役)
佐々木将人(理学療法士 / ワークショップデザイナー)
居城柚那(鞆の浦・さくらホーム)
山本尊也(福山市財政課)

<協力>
羽田知世(鞆の浦・さくらホーム / 燧冶)

<ボランティアスタッフ>
箕島実佳

タイムスケジュール

◆ 1日目(9月2日)
12:50 開会挨拶・自己紹介
13:10 講義「医療者が提案する住まいづくり」+質疑応答
14:30 講義「ケアのデザイン」+質疑応答
15:30 まち歩き/課題発表
17:00 終了
18:30 懇親会

◆ 2日目(9月3日)
8:00 朝食
8:30 出発
10:00 東広島・みそのっこ見学
11:30 尾道・ゆずっこホームみなり&わたくしホテル見学
12:30 解散

各コンテンツレポート

講義「医療者が提案する住まいづくり」

講師:満元貴治さん(株式会社HAPROT代表取締役)

2021年病院から独立し、2022年に創業。11年間、作業療法士としてリハビリ病院・総合病院に勤務した経験・知識を基に、医療視点で安心・安全な間取り設計の基準である「安全持続性能」を提唱。【大切な人を守る】を理念に掲げ、住宅内の事故を予防する住宅、身体状況・家族構成・ライフスタイルが変化しても住み続けられる住宅を提案している。主な事業は、住宅会社の顧問、講師、SNSの運営。「安全持続性能の会」は17道県22社、YouTubeチャンネル登録社数7600人、SNS総フォロワー1.5万人。2023年9月に初となる著書『作業療法士が伝えたい ケガをしない家づくり: 住宅内事故を防ぐ50の方法』を発刊。


定例会の前半は、HAPROT(ハプロット)代表・満元貴治さんによる「医療者が提案する住まいづくり」の講義からスタートしました。満元さんは、作業療法士として11年間病院で勤務した後、安心・安全な住宅内環境を提案する会社を立ち上げ、現在は住宅業界を対象に、安心で安全で長く住み続けることのできる間取り設計の提案を行っています。

講義では、「怪我予防」や「最期まで住める」をキーワードとした間取り設計や、「エイジング・イン・プレイス※」の考え方について解説がありました。また、高齢者に起こりやすい事故や、その引き金となる環境についてクイズ形式で説明されました。

医療現場を飛び出して全く異なる業界で一から事業を始めた満元さんのキャリアにも、多くの受講生が関心を寄せました。特に、作業療法士の資格を有する受講生にとっては大きな刺激となったようです。

※ エイジング・イン・プレイス:歳をとって身体的に衰えても、「住み慣れた場所や環境・住まいで、その人らしく最期まで暮らす」という概念。

講義「ケアのデザイン」

講師:簾藤麻木さん(一級建築士事務所nenlin/ケアのデザインストアねんりん代表)

神奈川県逗子市出身。一級建築士、福祉用具専門相談員。家族の介護経験から、空間や道具の違いで生きる意欲が変わることを痛感し建築を志す。大学院卒業後、建築設計事務所を経て2018年に起業。医療福祉施設の設計・アドバイス、製品企画を手掛けるほか、全国からケアの日用品を集めた「ケアのデザインストアねんりん」を運営。「ケアに多用な選択肢を」をミッションに、医療福祉現場の声を建築・ものづくりに結ぶ活動に取り組んでいる。


次に、一級建築士の簾藤麻木さんによる「ケアのデザイン」の講義が行われました。簾藤さんは、ご自身のお祖母様の介護経験から建築業界に進み、現在は医療機関や公共施設などのさまざまな設計に携わりながら、「ケアのデザインストアねんりん」というケアのデザイン商品を扱うオンラインショップを運営しています。

講義では、医療機関や介護福祉施設の設計・施工に関する基礎知識や、カラダとココロが動くケアのデザインについて、全国の実例をもとに紹介がありました。また、実際に食器やエプロン、パジャマなどのケアのデザイン商品にも触れながら、その商品やデザインに込められた想いが伝えられました。

建築業界と介護福祉業界の架け橋として最前線を走り続けている簾藤さんの活動や想いに共感した受講生も多く、講義の後も熱い意見交換が行われていました。


まち歩き

今回は、まち歩きを行うグループとそれぞれの地域の課題発表を行うグループに分かれてワークを進めました。

まち歩きのグループは、鞆の歴史や暮らしについて紹介しながら海やお寺、観光スポットを巡りました。また、高齢者が暮らすグループホーム・さくらホームや、障害のある子どもたちが通う放課後等デイサービス・さくらんぼを見学しました。

1時間半の鞆の浦満喫コース!充実したまち歩きとなったようです。


課題発表

課題発表グループでは、参加者の皆さんが活動している地域での課題やこれから取り組んでいきたいことを発表しました。メンバーが全国各地から集結しているため、さまざまな土地での課題が共有でき、有意義な時間となったようです。

ゆず見学ツアー

講師:川原奨二さん(株式会社ゆず 代表取締役)

1977年広島県尾道市向島出身。介護福祉士の養成校を卒業後、介護現場での経験を積み2014年に起業。現在は、認知症ケアに特化した高齢者介護サービスを中心に9事業所を運営。施設づくりで大切にしていることは「自分が居たい場所をデザインすること」。「いつまでも、どこまでも、フリースタイル」をモットーにすべてのひとが人生の最期の瞬間まで、「自分らしく」いられる社会環境づくりを目指している。


2日目は、株式会社ゆずさんが運営する、尾道と東広島の施設見学ツアーを行いました。代表の川原さんは、介護現場の経験を経て2014年にゆずを創業。現在は、尾道や東広島でグループホームやデイサービス、看多機、小多機、ホテル、保育園、学生シェアハウスなどを展開しています。感情環境デザイナーやコミュニティデザイナーなど、異業種の人と一緒に「空間づくり」に取り組んでいます。実際の施設をたくさん見学させて頂き、受講生の皆さんは大変学びとなったようです。

<今回ご案内いただいた施設>
◆ 広島県東広島市
・みそのっこ(看多機・グループホーム・学生専用シェアハウスの複合施設)

◆ 尾道にある施設
・ゆずっこホームみなり(小多機)
・尾道のおばあちゃんとわたくしホテル(ゲストハウス)
・看多機ホームみなりっこ(看多機)
・保育園
など

みそのっこ(看多機・グループホーム・学生専用シェアハウスの複合施設)
みそのっこの中庭
ゆず代表・川原奨二さん
ゆずっこホームみなり(小多機)
ゆずっこホームみなりの中庭には、コピーライターさんによる素敵な言葉がたくさん散りばめられている
尾道のおばあちゃんとわたくしホテル(ゲストハウス)
尾道のおばあちゃんとわたくしホテルのリビング


まとめ

今回の定例会では、ハード面からのケアについて理解することを目標に、ケアのデザインや作業療法士の視点を活かした空間づくりについて学びを深めました。また、まち歩きや課題発表、懇親会などでの講師や参加者同士の交流を通して、地域で活動するための新たな視点を得ることができました。

今後、受講生の皆さんは、本プログラムで学んだことを活かしながら自身が貢献したい地域の課題に向き合い、具体的なアクションを表現できるように12月の最終成果発表会まで準備をすすめていきます。

第4回定例会(10月11日)のテーマは、「ヘルスケアビジネス」と「官民連携」です。福山市地域おこし協力隊では、今後も本プログラムの様子を当サイトやSNS等で発信していきますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。


関連サイト/SNS
福山市地域おこし協力隊Instagram
鞆の浦・地域医療プログラムInstagram

【取材・文=河村由実子、撮影=Takaya Yamamoto】

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