2023年7月29日(土)から30日(日)にかけて、地域医療のリーダー人材を育成する「鞆の浦・地域医療プログラム2023」の第1回定例会が開催されました。
羽田冨美江さん(有限会社親和代表取締役)、内海慎一さん(LifeWork コミュニティデザイナー)、佐々木将人さん(ワークショップデザイナー)の3名を講師に迎え、15名の受講者たちは、「地域との関わり方」や「コミュニティデザイン」について学びを深めました。本記事では、第1回定例会の様子をお伝えします。
鞆の浦・地域医療プログラムとは
鞆の浦・地域医療プログラムは、病院や学校だけでは得られない地域医療におけるアプローチ方法の選択肢を広げることを目的とした6ヶ月間の人材育成プログラムです。地域医療をより良くしたいと考えている方を支援するために、2023年春に立ち上がりました。自身が活動する地域での悩みや課題を解決することのできる、地域医療のリーダー人材を育成します。
イベント概要
鞆の浦・地域医療プログラム2023 第1回定例会
主催:鞆のくらしの診療所、福山市地域おこし協力隊、福山観光旅行株式会社
日程 | 2023年7月29日(土)13:00 〜 7月30日(日)12:00 |
開催場所 | お宿と集いの場「鞆の浦・燧冶」 |
内容 | 講義:「地域との関わり方」「コミュニティデザイン」 チェックインワークショップ |
参加者 | <講師> ※敬称略、順不同 羽田冨美江(鞆の浦・さくらホーム | 有限会社親和代表取締役) 内海慎一(LifeWork/コミュニティデザイナー) 佐々木将人(理学療法士、コミュニティマネージャー、ワークショップデザイナー) <受講生> 藤田日菜子(理学療法士) 飯塚純子(障害福祉事業所管理者・相談員) 不破花奈実(CS・看護師) 多治比 麻莉奈(看護師) 土井脩平(理学療法士) 光田栄子(医師) 槌田梨奈(作業療法士) 西原康平(看護師) 森田珠衣(介護職/作業療法士) 竹中萌(医師) 田辺裕雅(医師) 前田徳也(医師) 篠田和(医学生) 橘髙みなみ(医学生) 中尾光希(医学生) <スタッフ> 平岩千尋(鞆のくらしの診療所 / 藤井病院) 河村由実子(福山市地域おこし協力隊) 漆原治樹(福山観光旅行株式会社 代表取締役) 佐々木将人(理学療法士 / ワークショップデザイナー) 居城柚那(鞆の浦・さくらホーム) 山本尊也(福山市財政課) <協力> 羽田知世(鞆の浦・さくらホーム / 燧冶) 志田千帆(NPO法人マナビエル) <ボランティアスタッフ> 箕島実佳 甲斐美加 中川陽子 |
タイムスケジュール
◆ 1日目(7月29日)
12:50 開会挨拶・自己紹介
13:10 講義「地域との関わり方」+質疑応答
14:10 講義「コミュニティデザイン」+質疑応答
15:20 まち歩き説明
15:30 さくらホーム・藤井病院見学、まち歩き
17:00 振り返り、終了
18:30 懇親会
◆ 2日目(7月30日)
8:30 朝食
9:45 チェックインワークショップ
11:45 事務連絡
12:00 解散
各コンテンツレポート
講義「地域との関わり方」
講師:羽田冨美江さん(鞆の浦・さくらホーム|有限会社親和 代表取締役)
1956年兵庫県相生市生まれ。理学療法士、介護支援専門員、認知症介護指導者。2004年4月鞆の浦・さくらホームを開所し、福山市鞆町で地域共生のまちづくりを実践している。グループホーム、地域密着型デイサービス、小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業、放課後等デイサービス、ゲストハウスを運営。著書に『超高齢社会の介護はおもしろい!』(ブリコラージュ、2019年)など。
まずは、さくらホーム創設者・羽田冨美江さんによる「地域との関わり方」の講義がありました。20年にわたる鞆の浦とさくらホームの歩みや、ご自身のターニングポイントなど、心に響くメッセージがたくさん伝えられました。特に、「職員の地域化」が強調され、地域と関わっていく上で大切なこととして紹介されました。
地域では、信頼関係がなくては個人のスキルを活かすことが非常に難しいです。そのため、町の人と顔なじみになったり、住民と何気ない会話をしたり、サークルや祭り、商店など地域を理解したりすることから始めることが重要です。
最後は、「目に見えない資本(知識資本、信頼資本、関係資本、評判資本、共感資本)」を身につけた人材こそが重要となるという言葉で締めくくられました。会場からは、講義内容を深掘りする質問や、羽田さんの原動力やこれまでの歩みに関する質問など、様々な角度から質問が寄せられました。
講義「コミュニティデザイン」
講師:内海慎一さん(LifeWork/コミュニティデザイナー)
1983年愛知県生まれ。大学時代に坂茂氏のもとで建築を学んだ後、広告代理店を経て、地域の人たちと一緒に有形・無形の未来をデザインしていく「コミュニティデザイン」の分野に飛び込む。まちづくりのワークショップ、住民参加型の建築づくりなどに関するプロジェクトが多い。近年では、介護・福祉施設のプロジェクトに様々な形で参画。主な仕事に、土岐くらしのラボ(岐阜県土岐市)、SOUPタウンプロジェクト(愛知県豊田市)、鞆の浦・お宿と集いの場 燧冶(広島県福山市)、尾道のおばあちゃんとわたくしホテル(広島県尾道市)など。
次に、内海慎一さんによる「コミュニティデザイン」の講義が行われました。
講義では、実例をもとにした取り組みの紹介から始まり、コミュニティデザインとは何かについての説明や、コミュニティデザインの進め方・コツについても紹介されました。
さらに、行動経済学をもとにした考え方や、未来から逆算するバックキャスティング(※1) のフレームワークなども伝えられ、受講生の皆さんは、課題解決に向けたアイデアを得るためのヒントを得ることができました。
質疑応答の時間では、コミュニティデザインに興味を持った受講生から、より実践的な質問やコメントがたくさん寄せられました。
内海さんからは、コミュニティデザインでは目的を意識しながらも過程を楽しむこと、過程に多くの方が参加できるようにデザインすること、そして記録を残すことなどが重要なポイントとして挙げられました。
※1:未来に向けた目標を設定し、その目標を達成するための方法を、未来から現在に向かって逆算して考えるシナリオ作成手法
施設見学 / まち歩き
定例会当日、鞆の浦は猛暑に見舞われ、ポイントを絞ったまち歩きを行いました。
2つのグループに別れ、鞆の浦の介護拠点である「鞆の浦・さくらホーム」と、医療拠点である「藤井病院」を見学しました。
チェックインワークショプ
講師:佐々木将人(理学療法士、コミュニティマネージャー、ワークショップデザイナー)
1990年大阪府枚方市生まれ。訪問看護ステーション・療養型病院を経て、訪問診療所で診療同行セラピストとして勤務。理学療法士として働きながら組織内の関係性構築を目的としたワークショップを担当する。また、日本最大級介護のコミュニティ「KAIGO LEADERS」でコミュニティマネージャーを務める。ワークショップや対話などの手段を用い、人と人との有機的な関わり・つながりの創出と場の活性化を目指す。
2日目は、理学療法士でワークショップデザイナーの佐々木将人さんのファシリテーションのもと、「チェックインワークショップ」を行いました。受講生のみなさんは、輪になった状態で以下について2時間じっくりと話し合いました。
・自分が大切にすること
・みんなで大切にしたいルール
・難しくなった時にどうするか
それぞれに心理的安全性が保たれた状態で自由に発言することができており、会場は終始いい雰囲気でした。
懇親会
懇親会は、鞆の浦にあるおにぎりとスープのCafe「クランク」を会場に行われました。クランクは、さくらホームが2023年7月にオープンした就労継続支援B型事業所です。
料理は、クランクのスープや唐揚げ、地元の和食料理屋のオードブルなどを楽しみました。どれも美味しく、参加者同士の会話も弾みました。
<懇親会の流れ>
・乾杯(平岩千尋さん)
・歓談&まち歩き振り返り
・振り返り発表
・席替え・歓談
・トークセッション(内海慎一さん・クランク管理者 羽田和剛さん)
・締めの挨拶(河村)
まとめ
今回の定例会では、地域との関わり方や地域ぐるみのケア、コミュニティデザインについて学びを深めました。また、施設見学やまち歩き、参加者同士の交流を通して、地域に向き合う際の新たな視点を得ることができました。
今後、受講生の皆さんは、本プログラムで学んだことを活かしながら自身が貢献したい地域の課題に向き合い、具体的なアクションを表現できるように12月の最終成果発表会まで準備をすすめていきます。
第2回定例会(8月16日)のテーマは、「全国の地域医療の実践」です。福山市地域おこし協力隊では、今後も本プログラムの様子を当サイトやSNS等で発信していきますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
関連サイト/SNS
・福山市地域おこし協力隊Instagram
・鞆の浦・地域医療プログラムInstagram
【取材・文=河村由実子、撮影=山本尊也】
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